お客様からのご要望
コンパスカッター刃の替刃の耐摩耗性向上、硬度向上によるカッター刃の長寿命化の目的でTiNコーティングを試したいとの要望がありました。お客様の製品使用については、農業用フィルム、シートの有孔加工を施し付加価値を付けるといった内容でした。通気性や通水性、省力化機能等をフィルムに与えているとの話も伺えました。相談の詳しい内容については、シートの種類(硬さや、厚み)によっては2.3シートカットするとコンパスカッターの寿命が来てしまうような状態のものもあるとのことでした。耐久性向上及び硬度向上による刃物の長寿命化にTiNコーティングの実績があったので提案しました。
コンパスカッター刃(替刃)の概要
サイズ:24mm×9mm×0.5mm ※市販品(5枚の刃が連結されているもの)
材質:合金工具鋼
数量:45本
受入検査
お客様から送られてきた製品はすべて新品でしたので外観検査において目立った汚れ、キズはありませんでした。
下処理、洗浄
脱脂、汚れ除去の目的で製品の全面を専用の有機溶剤にて拭き作業を行いました。コーティングエリアではない部分に関しても加熱時に汚れなどからアウトガスが発生しコーティングの密着性低下の可能性があることから、カッター刃に擦り傷が入らないよう全面を入念に洗浄しました。さらに全面を仕上げ拭き処理を行いました。洗浄後の製品に液シミなどが無いか入念に外観検査を行いコーティング工程へと流動しました。
コーティング(アークイオンプレーティング法)
製品を専用の取り付け治具にセットし台車に取り付けました。製品に治具との接触によるキズが入らないよう慎重に取り付けを行いました。次に所定の温度で成膜許可圧力まで真空加熱による脱ガスを行いました。真空加熱による脱ガスを行う事で成膜中のアウトガスが発生しにくくなりコーティングの密着性が上がります。次に所定の時間アルゴンイオンを製品表面にたたきつけるイオンボンバード処理を行い、表面のクリーニングを行いました。イオンボンバード処理を行うことによって、さらにコーティングの密着性向上につながります。使用ガス流量、成膜時間、成膜時電流値、冷却時間等、自社のTiNコーティングの条件で成膜処理を行いました。コーティング終了後、膜厚測定を行い規定の膜厚以上に膜が着いているかを確認しました。また、外観検査を行いキズ、コート抜け、シミ、汚れ等が無いか確認を行い、梱包し発送となりました。
使用期間について
現在は客先にてコンパスカッター刃の寿命が延びましたとの声をいただけました。