お客様からのご要望

ステンレス製保護カバーへのDLC膜コーティングガラス繊維を噴射するノズル先端付近カバーの硬度向上、耐摩耗性向上、滑り性向上の希望がありました。噴射機の用途は、浄化槽タンクの内壁にガラス繊維を噴射し耐久性を向上させることでした。ガラス繊維はF.R.Pと呼ばれプラスチックの中にガラス繊維等の繊維を入れ強度を向上させたものです。繊維強化プラスチックとも呼ばれることがあります。特徴としては、金属材より軽量かつ保湿性があり耐蝕性があるとされています。F.R.Pは浄化槽内部強化の他にも小型船舶の船体、自動車や鉄道車両の内外装、ユニットバスなど様々な機器に使用されています。

そのガラス繊維が噴射機周辺のカバーを摩耗させ、さらにカバー表面に蓄積することで、噴射角度が変わりガラス繊維が浄化槽タンクの内壁に均一に着かなくなることで困っていました。もともと、硬質クロムメッキにて耐摩耗性を上げていましたが耐久寿命は1ヶ月程度しかもたずカバーの交換を行っている状態でした。弊社としては滑り性が高く高硬度で耐摩耗性に優れているDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングを提案しました。お客様は長いこと悩まれていたので早急な対応が必要とされました。短納期でのプランニングを行いました。

ノズル先端付近カバーの概要

サイズ:およそ120mm×70mm(コの字型で両側立ち上がり10mm程度)
材質:SUS304
数量:1個

受入検査

お客様から送られてきたノズル先端付近カバーは新品でしたので外観検査において全体的に目立った汚れはありませんでした。また、キズやシミに関してもコーティングに問題が出るようなものは無くきれいな状態で納品していただきました。コーティングの密着性を上げるため、外観の清浄度が重要となります。

下処理、洗浄

脱脂、汚れ除去の目的で製品の全面を専用の有機溶剤にて拭き作業を行いました。角部に汚れ等が残りやすいので細い綿棒などを使用し洗浄を行いました。また、マイクロスコープを使用して汚れ、キズの確認を行いました。さらに全面の仕上げ拭き処理を行いました。洗浄後の製品に液シミなどが無いか入念に外観検査を行いコーティング工程へと流動しました。

コーティング

初めて処理をする形状であったため、製品取付用治具の設計に苦労をしました。コーティング範囲は基本的にガラス繊維が当たる部分が重要だったため、コーティングムラが発生しないような治具を準備しました。成膜中の熱によりアウトガスが発生した場合、コーティングの密着性を損なってしまう可能性があるので、真空過熱による脱ガスを十分に行いました。所定のコーティング条件により問題なくコーティングが完了しました。製品冷却後、装置から取り出し外観確認を行いました。目立った治具跡はついておらず、コート抜け、シミなどの外観の問題もなく梱包、発送となりました。