窒化チタンコーティングの特徴

窒化チタンコーティング膜の色味としては、ゴールド色になります。ゴールド色といっても様々な色味がございますが、黄色寄りのゴールドから、茶色寄りのゴールドまでの装飾用途であれば調整が可能です。窒化チタンコーティング硬度は、一般的にビッカース硬度2000~3000HVと言われます。ビッカース硬度だけでいうならば、サファイヤ相当の高硬度にもなり得る物質となります。窒化チタンコーティングは、耐摩耗性が優れているという点も特徴といえる部分で、靭性も高い事から摺動性が高い所などに良く使われます。その他、親和性が良い為、人体に対してもアレルギーなどの影響が少ないという事も広く知られています。

窒化チタン膜の構造

窒化チタンのみ(1層)一般的な1層コーティング

窒化チタンの特性

窒化チタンの特性キズ①ビッカース硬度は、HV2400~3000あり、弾性率は251GPa、熱膨張係数は、9.35E-6K-1、超伝導転移温度5.6K、酸化温度 800℃(大気)、高温の酸性溶液でゆっくりと腐食します。アルカリ溶液では常温でゆっくりと腐食する。

赤外線を反射、反射スペクトルは、金に似ており黄色見のある外観、摩擦係数は、0.4~0.9(表面状仕上げにより異なる)、化学量論約1:1で塩化ナトリウム型結晶構造をとり、TiNxのxが0.6~1.2mp化合物でも熱力学的に安定である。

窒化チタンの特性キズ②窒化チタン膜を絶対零度付近まで冷却するとクーパー対絶縁体が超絶縁体になる。

窒化チタン(TiN)の用途

現在、窒化チタンコーティングは金属コーティングの中でも、長い歴史を持つため世に出てから様々な用途に使われてきました。

①窒化チタン(TiN)の耐久性、耐摩耗性

最も一般的なのが、切削工具、工業用部品、車・バイク用パーツなど耐久性を必要とする箇所に使われています。
窒化チタンの特徴として、高硬度・高密着性・高靭性を持つことから、摩擦・摩耗による消耗が起こり得る金属加工用工具の刃、パンチ・ダイなど衝撃荷重が掛かる部品などを保護・長寿命化を目的として窒化チタンコーティングを行います。

②窒化チタン(TiN)の装飾

反射色が金色で、金メッキ・塗装の金色とはまた微妙に違った色調になるので、時計、食器、理美容用ハサミなどにも用いられています

③窒化チタン(TiN)の離型性向上

樹脂成型品の金型、樹脂成型用射出成型機用のスクリューシャフト、などにも使われており、製品と金型の離型性を向上させるなどの目的でも使用されます。

④窒化チタン(TiN)の高生体親和性、抗アレルギー性

生体親和性が高く、医療用途にも多く利用されています。
TiN自体は無毒であり、アメリカ食品医薬品局(FDA)のガイドラインを満たしていることから、手術用メス、人工関節、インプラント用の歯台などにも利用され、特有の骨と直接強固に結合する性質があります。
金属アレルギーの方に対しても効果的で、ピアス・ネックレスなど、体に身に付けるアクセサリーなどにも、装飾目的以外でも使用されたりします。

⑤窒化チタン(TiN)の輻射熱軽減

窒化チタンの反射スペクトルは、金(Au)と類似していて、赤外線を反射します。
その為、光源付近で使用するパーツなどに輻射熱が掛かりにくくする為に窒化チタンコーティングを処理する事があります。

まだ完全に解明されているわけではないですが、口内のプラークに対しての抗菌性などの実験も進んでおり、また別な用途にも転用の可能性が広がります。

TiN処理について(原理・処理方法・特徴・用途)

TiN膜の原理
チタン材料(Ti)コーティング時に窒素(N)を含ませることによりTi+N⇒TiNとなります。

処理方法
弊社では真空蒸着機を用いてTiNコーティングを行っています。そのため、製品表面の付着物、油分、水分を除去する必要があります。(密着力低下、不純物ガスによる特性劣化、表面変色防止のため)

処理工程は、特殊研磨布でのヤケ、異物除去を行い、有機溶剤での油分除去し、アルコール類での水分除去、ウエス等による表面乾拭きを行い、投入します。

TiN膜の特徴
チタン(Ti)は窒素(N)と反応する事で硬度が向上し、耐摩耗性が向上する。表面の摩擦係数が軽減するため滑り性、剥離性に対しても向上する。従来より樹脂成型機用の金型やドリルの刃等にも使用され、膜で400度程度までの環境下で実績があります。
人体に対しては、大気中の大半を占めている窒素(N)を含有させているため、窒化チタン(TiN)自体も人体に対してチタン同様に極めて影響がない物質である。
用途
医療用器具(手術用器具)、金型(樹脂金型、レンズ金型)、切削工具類(金属カッター、ドリルの刃)、機械部品、真空部品、装飾品(カメラ、時計のバンド)

薬剤、薬品等、他の材質コーティング等の使用有無について

成膜前洗浄時に有機溶剤を使用しています。後工程でアルコール拭き、水洗浄、乾燥しているので有機溶剤が残ることはありません。金型等でも使用されており、加熱することによる膜劣化、アウトガス等は極めて少ない膜となっております。

AIP(アークイオンプレーティング)PVDコーティング

AIP(アークイオンプレーティング)PVDコーティングで成膜したTiNコーティングは、表面がHCD方式に対して、多少表面が粗くなります。密着性に関しては、PVDコーティンングの中でも最高レベルで、工具、電極等耐久性が必要とされる箇所に良く使われています。アークイオンプレーティングの原理は、真空中にてコーティングさせたい金属を蒸発させ、さらにアーク放電を発生させることによりイオン化させます。(プラスイオン)

反対に、コーティングさせたい物にマイナス電荷を帯びさせることによりコーティング材が引き寄せられ、高密着な金属膜を形成します。膜硬度も、窒化量、電圧によって変化させる事が可能で、それぞれ製品にあったコーティングを成膜することが可能です。

成膜温度
150℃からの低温で成膜は可能ですが、通常の設定では400~450℃付近での成膜となります。
最大成膜サイズ
幅1400mm×高さ1150mm×奥160mm
※特殊な例として、幅2160mmまで実績あり。

HCD(ホローカソード)PVDコーティング

HCD(ホローカソード)PVDコーティングで成膜したTiNコーティングは平滑性に優れており面粗度を重要とする冷間成形用金型や鏡面金型などにも適しております。硬度もHv2300と硬く、耐磨耗性、耐蝕性に優れていて摩耗し辛く、錆び難い為、品質の向上に貢献することが出来ます。

当社コーティングはホローカソードのイオンプレーティング法でコーティングしていますので高硬度、高密着力と硬く密着性の高い優れたコーティングを可能としています。

チタンの特性としては人体にも優しく親和性に優れている性質を持っており人工骨やピアスの素材などとしても利用されている成分です。チタンは自然界で大変多い成分で比較的安価な物質でPVDコーティングの中でも大変低価格なコーティングです。

バランスの良いコーティング
窒化チタンコーティングは、セラミックコーティングのスタンダード的な存在で、切削工具や金型の品質を改善する硬度や耐熱性などの諸物性をバランス良く合わせ持っています。

特に耐摩耗性の向上に貢献
表面硬度の上昇と膜表面に発生するドロップレット(超微細な突起物)を抑えたプロセスで、耐摩耗性の向上を実現します。

高い密着力で安定したコーティングを可能
TiNコーティングは、他のセラミックコーティングの下地として使われるほど基材との密着力が強いことが特徴で、コーティグが剥がれにくいため、長期間に渡って安定した性能を発揮します。

優れた表面平滑性
膜の密着力を損なうこと無く表面平滑性を向上する独自コーティング技術でなめらかなTiNコーティングを実現しました。

成膜温度が高い
成膜時の温度が、高くなりがちで400~500℃付近まで上昇しますので、熱に弱い金属・形状には不向き。

成膜サイズ
L1100×φ150

実績例

スクリューヘッド
スクリューシャフト
ギヤ
スプーン、トング、靴ヘラ

SUS板