炎焼き入れ処理とは
炎焼き入れとは、火炎焼き入れまたは、フレームハードニングとも呼ばれています。金属の表面を硬化させるための熱処理方法の一つです。この方法は、ガスバーナー(トーチ)などの直接火炎を使用して金属の表面を急速に加熱し、その後急冷することで、表面を硬化させる熱処理方法です。処理物の寸法や形状の制約を受けません。加熱用ガス燃料にはアセチレン(C2H2),プロピレン(C3H6),プロパン(C3H8),といった、都市ガスなどが用いられており、酸素ガスとの混合ガスによる燃焼炎加熱するもので、表面焼き入れ処理の中では加熱速度が最も遅いものです。
特徴
シンプルな設備:
炎焼き入れは、特別な設備を必要としないため、ガスバーナーと冷却設備があれば実施できます。
適用範囲の広さ:
形状や大きさに制約が少なく、大型部品や形状が複雑な部品にも適用でき、手動で行うため、柔軟性があり細かい調整が可能です。
コスト効率:
初期設備投資が少なく、運用コストも低いため、中小企業や単品生産にも向いています。
迅速な処理:
短時間で表面を硬化させることができ、生産性が高いです。
均一性の管理が難しい:
手作業に依存するため、加熱や冷却の均一性を保つのが難しく、熟練の技術が必要です。また、炎の温度や冷却条件の変動により、品質にばらつきが生じることがあります。
硬化層の深さの制約:
表面のみが硬化するため、内部の特性は変わらず、深い硬化層が必要な場合には適さないことがあります。
作業工程
前処理:
・炎焼き入れを行う部品を洗浄し、油分や汚れを取り除きます。
・炎焼き入れを行う部分を特定し、必要に応じてマスキングや保護を行います。
加熱処理:
・ガスバーナー(通常はプロパンやアセチレンなどの燃料ガスと酸素を使用)を用いて部品の表面を加熱します。
・火炎の温度は非常に高く、短時間で表面を適切な温度(通常は850°Cから950°C程度)まで加熱します。
・加熱範囲を均一にするためにバーナーを動かし、表面全体を均一に加熱します。
・加熱温度管理は非常に重要で、適切な温度に達しないと十分な硬度が得られず、逆に高すぎると表面が過剰に酸化されて品質が
低下する可能性があります。
・短時間で加熱することが求められますが、加熱時間が長すぎると内部まで熱が浸透し、
全体の特性が変わってしまいます。
冷却処理:
・加熱後、すぐに冷却媒体(通常は水、油、水溶性冷却剤)に浸すことで急冷します。
この急冷プロセスにより、金属の表面が硬化します。
冷却速度や冷却媒体の種類は、必要な硬度や特性に応じて選ばれます。
急冷速度が速いほど硬度は高くなりますが、割れや歪みのリスクが増します。