お客様からの要望

ギアへのTiN膜コーティングお客様からの依頼内容として遠心分離器に使用されるギアの耐久性、耐摩耗性を向上させたいとの内容からTiNコーティングをしたいとの話がありました。固定用の2つの多きなギアの周りを小さなギアがあり、大きなギアの周りを小さな箱が回る仕組みになっていました。今回は固定用に使用されている2つの大きなギアの耐摩耗性を向上させることとなりました。これまでは、金属表面の熱処理のうえに鍍金を施していたそうです。それだけではギアの消耗が激しく金属コーティングにトライしたいという経緯でした。半年から1年というスパンで大き目なギアを交換しなければならない現状は、作業効率やコストの問題もありました。TiNコーティングにより交換頻度を少なくできれば大きな改善になるといった話もされていました。従来のギアは加工から熱処理まで行っていたのですが、アークイオンプレーティングの成膜温度が熱処理の温度を超えてしまう可能性がありました。成膜温度が熱処理温度を超えることにより熱処理によって高めた硬度が、もともとの母材が持つ硬度より下がってしまうことがありますので、今回は熱処理をしないまま納品していただくこととなりました。

ギアの概要

サイズ:φ96mm×150mm 
材質:S45C
数量:2個

受入検査

お客様から送られてきた製品はすべて新品でしたので外観検査において目立った汚れ、キズはありませんでした。

下処理、洗浄

超音波洗浄機にて洗浄を行う際に、傷がらないよう専用の洗浄枠を作成しました。超音波洗浄は手拭き時に洗浄が行き届かない溝や凹み部を洗浄する効果があります。さらに全面を有機溶剤にて仕上げ拭き処理を行いました。洗浄後の製品に液シミなどが無いか入念に外観検査を行いコーティング工程へと流動しました。

コーティング(アークイオンプレーティング法)

ギアへのTiN膜コーティング洗浄時と同様に、コーティング時の全面成膜および、製品保持のため、コーティング専用の治具を作成しました。ギアの重さに耐えられるよう設計のアイデア出しに多少時間がかかってしまいました。製品を専用治具にセットし台車に取り付け、所定の温度で成膜許可圧力まで真空加熱による脱ガスを行いました。真空加熱による脱ガスを行う事で成膜中のアウトガスが発生しにくくなりコーティングの密着性が上がります。次に所定の時間アルゴンイオンを製品表面にたたきつけるイオンボンバード処理を行い、表面のクリーニングを行いました。イオンボンバード処理を行うことによって、さらにコーティングの密着性向上につながります。使用ガス流量、成膜時間、成膜時電流値、冷却時間等、自社のTiNコーティングの条件で成膜処理を行いました。コーティング終了後は冷却、取り出しを行いました。テストピースにて膜厚測定を行い規定の膜厚以上に膜が着いているかを確認しました。その後、外観検査にてキズ、コート抜け、シミ、汚れ等が無いか確認を行い、梱包し発送となりました。

納品後のお客様の声

ギアへのTiN膜コーティング製品の使用効果については現在、お客様にて試験中です。