お客様からのご要望

電極作成用Ti線へのTiN膜コーティング電極作成用Ti線(線の先端部に四角い板状が溶接されている)にTiNコーティングを試したいとの要望がありました。コーティングの目的として2つあり、1つはTi表面の酸化被膜の除去、Ti材も研磨後は他の金属同様、表面に酸化被膜が形成されてしまいます。もう1つはTi自体の導電性を下げたいといった内容でした。主要部は線ではなく先端の板状の部分でした。今回のTiNコートはアンダーコートとして使用されるものでした。TiN膜の上にトップコートとして別の膜が着けられるとのことでした。

電極製造用Ti線(板部)の概要

サイズ:10mm×10mm×厚み1mm
材質:Ti
数量:5本

受入検査

お客様から送られてきた製品はすべて新品でしたので外観検査において目立った汚れ、キズはありませんでした。また、Ti線、板部全面にブラスト処理が施されていました。

下処理、洗浄

脱脂、汚れ除去の目的で製品の全面を専用の有機溶剤にて拭き作業を行いました。コーティングエリアではないが、加熱時に汚れなどからアウトガスが発生しスリーブ管外側のコーティングの密着性低下の可能性があることから、Ti線も入念に洗浄を行いました。さらに全面を仕上げ拭き処理を行いました。洗浄後の製品に液シミなどが無いか入念に外観検査を行いコーティング工程へと流動しました。

コーティング(アークイオンプレーティング法)

製品を専用の取り付け治具にセットし台車に取り付けました。製品に治具との接触によるキズが入らないよう慎重に取り付けを行いました。次に所定の温度で成膜許可圧力まで真空加熱による脱ガスを行いました。真空加熱による脱ガスを行う事で成膜中のアウトガスが発生しにくくなり密なコーティングができるようになります。次に所定の時間アルゴンイオンを製品表面にたたきつけるイオンボンバード処理を行い、さらに表面のクリーニングを行いました。イオンボンバード処理を行う事によってコーティングの密着性向上につながります。使用ガス流量、成膜時間、成膜時電流値、冷却時間等、自社のTiNコーティングの条件で成膜処理を行いました。コーティング終了後、膜厚測定を行い規定の膜厚以上に膜が着いているかを確認しました。また、外観検査を行いキズ、コート抜け、シミ、汚れ等が無いか確認を行い、梱包し発送となりました。

使用期間について

お客様の評価として、Ti線(板部)のTiNコーティングにおいての電気伝導率低下はできたもののトップコートとの接地面に問題があり板部全体の電気伝導率は思ったよりも下がらないという結果となってしまいました。しかし、TiNコーティングによってTi基板の電気伝導率は低減できるものという実績を残せました。