錫(Tin)は、典型元素の中の炭素族元素に分類される金属で、原子番号50の元素です。元素記号は Snとされます。スズは軟らかく展延性を有した結晶性の高い白銀色の金属です。金属スズに力をかけて変形させると、「スズ鳴き」と呼ばれる双晶変形による亀裂音を発します。第14族元素中で最も低い232℃の融点を持ち、粒径11 nmの微細粒子ではさらに低温(177℃)で溶融します。
無電解錫めっきの特徴
1,無電解めっき(化学めっき)
通常の電解めっきは電流を必要としますが、無電解錫めっきは電気を使用せずに行われます。 これにより、電流源や電極などの設備が不要となり、装置の簡素化が可能となります。
2,均一なめっき厚
無電解めっきは、電気めっきと比較して均一なめっき厚を実現しやすいです。電気めっきでは電流の通り方によってめっきの均一性に課題がありますが、無電解めっきはそのような問題が軽減されます。
3,はんだ付け性の向上
無電解錫めっきは、はんだ付け性が優れています。めっき層は柔軟で、はんだの流れを助ける特性があります。
4,熱安定性
錫は高温に対して安定しており、無電解錫めっきは高温環境での安定性があります。
5,耐蝕性(耐食性)向上
無電解錫メッキを施すことにより耐蝕性が向上します。錆や腐食をさせにくく製品の延命につながります。
無電解錫めっきの工程
①前処理
めっきを行う前に、機材表面を清浄化し、油脂、酸化物、および他の不純物を取り除きます。これは脱脂や酸洗浄などの工程も含みます。機材表面を正常な状態にすることでめっきの密着性向上につながります。
②活性化
前処理後、被メッキ物の表面を活性化するための処理が行われます。これにより、金属イオンが表面に吸着しやすくなります。
③無電解錫めっき
活性化された表面に、無電解錫めっき液が塗布されます。この液には、錫イオンや錫化合物、還元剤、安定剤が含まれています。化学反応により、酸化錫が析出して均一な錫めっき層が形成されます。析出反応は50℃以下でも進行しますが、析出速度は遅くなります。めっき温度が上昇するにしたがって析出速度は速くなるが、錫イオンの酸化も促進されてしまうので注意が必要となります。
④反応時間の管理
めっきの目的や仕様に応じて、基材をめっき液中に浸漬する時間を管理します。これにより、適切なめっき厚や性能が得られます。
⑤めっき後の洗浄、乾燥
めっき後、基材を洗浄してめっき液を除去します。これによって残留物や比較的危険な薬品を取り除きます。一般的に、めっき後の洗浄は複数回行われます。 その後、乾燥させ水分による表面の酸化を防ぎます。
⑥硬化処理
めっきが完了した後、硬化処理が行われることがあります。硬化は、銀めっき層の硬度や耐摩耗性を向上させ、製品の寿命を延ばす役割があります。
⑦仕上げ処理
製品の規格や仕上がり状態によってはめっき後の仕上げ処理が必要なものがあります。これには、乾燥、焼結、研磨、防錆処理などが含まれます。
⑧品質確認、外観検査
めっき膜の厚さを測定し、仕様に合うように適合確認します。また、めっき膜がめっき製品にしっかりと密着しているかどうかを検査します。その後、製品の外観確認を行います。キズ、汚れ、シミ、めっき剥がれ、めっきの均一性等を確認し問題が無ければ梱包、発送となります。
これらの特徴により、無電解錫めっきは多岐にわたる用途に適しており、特に電子機器や通信機器、自動車部品、家庭用製品などで幅広く利用されています。