お客様からのご要望

工業機器部品の針へのTiAlNコーティング工業機器に組み込まれる炭素工具鋼材の針に離型性を持たせたいとの要望がありました。工業機器の仕組みとして、加工時の製品自体に針が刺された状態で搬送される使用となっており、搬送後に針と製品が離れにくくなるといった問題がありました。針自体に離型性を持たせることで解決できないかと弊社のTiAlNコーティングを提案しました。針にはもともとめっき処理が施されており金属膜が正常にコーティングできるか、また密着性は確保できるかなどの問題があったため、まずはテスト成膜を行うこととなりました。テスト結果としてコーティングはされたものの十分な密着性が無いと判断し、製品のメめっきをサンドブラストにて剥がし、その後TiAlNコーティングを実施することとなりました。めっき除去後のコーティングの密着性は改善したので10本の試作品を進めることになりました。

工業機器部品の針の概要

サイズ:φ2mm×長さ75mm
材質:SUS316
数量:10本

受入検査

お客様から送られてきた製品はすべて新品でしたので外観検査において目立った汚れ、キズはありませんでした。

下処理、洗浄

テスト成膜時同様のサンドブラスト処理を行いました。その後、製品の全面を専用の有機溶剤にて拭き作業を行いました。さらに全面を仕上げ拭き処理を行いました。洗浄後の製品に液シミなどが無いか入念に外観検査を行いコーティング工程へと流動しました。

コーティング(アークイオンプレーティング法)

製品を専用の取り付け治具にセットし台車に取り付けました。製品に治具との接触によるキズが入らないよう慎重に取り付けを行いました。次に所定の温度で成膜許可圧力まで真空加熱による脱ガスを行いました。真空加熱による脱ガスを行う事で成膜中のアウトガスが発生しにくくなり密なコーティングができるようになります。次に所定の時間アルゴンイオンを製品表面にたたきつけるイオンボンバード処理を行い、さらに表面のクリーニングを行いました。イオンボンバード処理を行う事によってコーティングの密着性向上につながります。使用ガス流量、成膜時間、成膜時電流値、冷却時間等、自社のTiAlNコーティングの条件で成膜処理を行いました。コーティング終了後、膜厚測定を行い規定の膜厚以上に膜が着いているかを確認しました。また、外観検査を行いキズ、コート抜け、シミ、汚れ等が無いか確認を行い、梱包し発送となりました。

使用期間について

お客様から3ヵ月経過しても離型力は維持されており製品の搬送もスムーズに行えるようになりましたとの声をいただいております。