お客様からのご要望

スリーブ管(外側)へのTiN膜コーティングシャフトに使用するスリーブ管の外側にTiNコーティングを試したいとの要望がありました。シャフトに設置したスリーブ管の外側にグランドパッキンが入り摺動し摩耗する仕様となっており、スリーブ管の硬度向上、耐摩耗性を高めたいといった目的でした。客先では過去に肉盛り、溶射で対応されていたとのことでした。溶射の内容はNi基系溶射(自溶性合金溶射)とWC系溶射(超音速ガス溶射)を試されたようですが、層間剝離が発生してしまったことから他の表面処理をトライしたいということでした。コーティングエリアの指定は、外側のグランドパッキンが当たる部分的な範囲指定でしたが、全面コーティング、スリーブ管内部への膜の入り込みが問題ないとのことでしたのでスリーブ管の外側前面にTiNコーティングを行うといった内容でまとまりました。客先から2週間程度の納期でお願いされたので、早急にコーティング時の製品保持用治具の作製を行いました。

スリーブ管の概要

サイズ:φ250mm×高さ350mm×厚み8.5mm
材質:SUS316
数量:1本

受入検査

お客様から送られてきた製品はすべて新品でしたので外観検査において目立った汚れ、キズはありませんでした。

下処理、洗浄

脱脂、汚れ除去の目的で製品の全面を専用の有機溶剤にて拭き作業を行いました。コーティングエリアではないが、加熱時に汚れなどからアウトガスが発生しスリーブ管外側のコーティングの密着性低下の可能性があることから、スリーブ管の内壁も入念に洗浄を行いました。さらに全面を仕上げ拭き処理を行いました。洗浄後の製品に液シミなどが無いか入念に外観検査を行いコーティング工程へと流動しました。

コーティング(アークイオンプレーティング法)

製品を専用の取り付け治具にセットし台車に取り付けました。製品に治具との接触によるキズが入らないよう慎重に取り付けを行いました。次に所定の温度で成膜許可圧力まで真空加熱による脱ガスを行いました。真空加熱による脱ガスを行う事で成膜中のアウトガスが発生しにくくなり密なコーティングができるようになります。次に所定の時間アルゴンイオンを製品表面にたたきつけるイオンボンバード処理を行い、さらに表面のクリーニングを行いました。イオンボンバード処理を行う事によってコーティングの密着性向上につながります。使用ガス流量、成膜時間、成膜時電流値、冷却時間等、自社のTiNコーティングの条件で成膜処理を行いました。コーティング終了後、膜厚測定を行い規定の膜厚以上に膜が着いているかを確認しました。また、外観検査を行いキズ、コート抜け、シミ、汚れ等が無いか確認を行い、梱包し発送となりました。

使用期間について

現在は客先にて評価中。