密着性について
金属コーティング(PVD)において母材と膜に高い密着性を得るためには様々な項目に気を付けなければなりません。大きく分けて2種類の枝分かれがあり片方は母材側、もう片方は成膜側となります。
母材側での要素
・表面の粗さ
・汚れ、シミなどの外観状態
・表面の酸化状態、腐食状態
・様々な汚れの種類に応じた適切な洗浄方法
上記のように母材側でも様々なことに気を付けなければいけません。表面粗さが大きい場合は、平面であってもミクロ的には様々な角度から成膜されるときと同様に密着力の低い部分が出来てしまう可能性があります。また、母材表面が汚染された状態では高機能な成膜装置の仕様や正しい成膜条件でコーティングをしても密着力が低下してしまいます。コーティング前の母材の表面状態は清浄でなければ高い密着性を得ることはできません。
成膜側での要素
・材質、形状、大きさ、数量に合った正しい成膜条件
・膜の着きまわりを考慮したセッティング
・洗浄過多によって起こる表面荒れ
・適切な加熱
・コーティング法
・成膜装置の選定
成膜側でもセッティングや成膜条件等、配慮しなければならない項目があります。またコーティング法や装置の選定でも条件次第で密着力は変わってくるものです。どんな形状のものにどのような条件で成膜するのか、その条件が良い条件であるほどコーティングの密着性が上がります。また、成膜時の熱によっても密着性は大きく変わってきます。母材に十分な加熱ができず与える熱が低い場合、密着性は低くなってしまうことがあります。原因として母材表面の汚染物がガス化しきれず成膜時の熱によりガス化し密度の高い膜が着かないことがあります。密度が低い膜は密着性が低くなる傾向があります。母材には適切な温度で熱をかけ、汚染物をガス化させ表面状態をなるべく正常な状態にする必要があります。
コーティング法(PVD)による密着性の違い
上記内容においてPVDコーティングの方法で密着性が変わることを言いましたが、金属成膜ではおもに下記のようなコーティング法があります。
・真空蒸着法
・スパッタリング法
・イオンプレーティング法(IP法)の密着性
などがありますが、中でもイオンプレーティング法(IP法)は他のコーティング法よりも密着力に優れています。基材側の使用条件が厳しい切削工具などによく選定されるコーティング法です。高い密着性を得た膜は膜剥がれをしにくくコーティング被膜の性能を維持することができます。イオンプレーティング法は真空中で蒸発、気化させた成膜材料の粒子(分子、原子)をプラズマによってイオン化、活性化させ高エネルギーを持った粒子として成膜出来ることで密着性が高くなります。