私達の身の回りには、気が付かないほど多くのレンズに囲まれています。例を挙げるならば、家に入る際に鳴らすインターフォンもカメラ内蔵の物が増えて来ています。

家のドアに付けられているドアスコープ、エアコン・テレビなどのリモコンに付いている赤外線を必要な方向へ投射するためのレンズ、視力を補正するための眼鏡等、家の中を探すだけでも様々なレンズが見つかります。

車へ乗れば、夜間走る際に必要なヘッドライトの内部にもミラーやレンズが含まれています。役割としては、照射する光を明るく遠くまで照らすというのは当然ですが、実は対向車に対してまぶしすぎない様、計算された複雑な形状のガラスになっています。

生活の中で良く利用する、コンビニエンスストア、銀行ATM等、セキュリティを高めなければいけない所には、間違いなく監視カメラが設置されています。例を挙げていけばキリがありませんが、普段の私たちの生活の中にレンズというものが欠かせなくなっています。

レンズが使われている製品の代表的なものといえるのが、『カメラ』です。現在では、デジタルが主流になっていますが、「風景を映す」というレンズを使った基本構造はあまり変化はありません。カメラにも用途により、様々な形状・種類があり、必ずレンズは使用されていますが、レンズの果たしている役割は、重要かつ普遍のものです。

昨今、パソコンや、携帯電話、カードなど、様々な箇所でICチップというものが利用されていますが、このICチップを製造する装置にもレンズが使用されています。
ICチップの製造は、「ステッパー露光装置」という装置を介して製造されています。

ICチップは爪ほどの大きさのシリコン基盤の上に作られた非常に小さな電子回路ですが、このICチップを製造する際に、レンズが大きな役割を果たしてきます。
ステッパー露光装置にて、複雑な回路パターンを20~30枚ものレンズ群を透過させ、縮小し基盤に焼き付けていきます。

その他、レンズは「読み取る」という役割も持っています。例えば、CD・DVD・BD(Blu-ray Disc)等の記録媒体の読み取り部分にも、プラスチック製の高性能レンズ(ピックアップレンズ)が使われています。

CD・DVD・BD(Blu-ray Disc)の表面にはピットと呼ばれる非常に細かい凹凸があり、そこにレーザー光線を当てて凹凸のパターンを読みとるのですが、そこでもレンズが重要な役割を担っています。

コピー機も同じように、コピーしたい物に光を当て、コピーしたい物を読み取り、さらに感光ドラム上に等倍、あるいは拡大・縮小した像を形成し転写します。FAXも同じような原理となります。

この他にも、映画館等で使われる、物体の像を拡大してスクリーンに投影するプロジェクタ、手元に置いたフィルムを拡大して投影するOHPでも、照明部分と投影部分にレンズが使われています。

IT機器の部品として使用されているレンズは、いわゆる一般的なレンズの形状だけでなく、かまぼこ型であるシリンドリカルレンズ、ドーナツ形であるトロイダルレンズ、ハエの目の様な形状をしたフライアイレンズ等、複雑な形状のレンズも使用されます。これらのレンズは、他の機器の技術が進むにつれ、それに合わせ作られたものです。

このように、普段気付きにくいかもしれませんが、様々な新しい技術と共にそれと組み合わせたレンズの利用が盛んに進められています。
※参考文献   永田 信一『図解 レンズがわかる本』