お客様からのご要望
硬度向上、耐久性向上相談がありました。シャーリング刃の交換頻度を少なくし生産性の向上を図りたいといった内容でした。
車のボディーに使用する分厚いを金属板を切断するために使用するシャーリング刃のため交換サイクルが3ヶ月と短いものでした。
受入検査
重さのあるシャーリング刃を落下や衝撃が無いよう慎重に移動させました。キズ、シミ、汚れ、油汚れなど入念な外観チェックを行いました。
キズがあった部分に関しては、後工程作業で入ったキズとの切り分けが出来る様に受入の時点で写真を撮っておきました。
下処理、洗浄について
①焼き入れ処理後のシャーリング刃だったため、シャーリング刃全体に酸化被膜が形成されており表面を磨く作業を行いました。全体を磨き上げ、刃先に関しては傷にならないようマスキングをしました。
②磨いた表面の番手をさらに追い込みました。最初に使用した番手よりも細かい番手を使用しました。
③磨き作業が完了したシャーリング刃全面の脱脂及び汚れの除去目的に専用の洗浄剤を使用し洗浄を行いました。
④最後に拭き残しが無いよう入念な外観チェックを行い、ワイプを使用し全体を空拭きしました。
専用台車へのセット
今回のシャーリング刃を台車にセットするにあたり、重さに耐えられるような治具をあらかじめ台車にセットしておきました。
リフターを使用し、およそ60kgあるシャーリング刃2本を台車の治具にセットしボルトで固定しました。シャーリング刃が周りのものぶつかってキズが入らないよう慎重に作業を行いました。
イオンボンバード処理
真空装置内にて、Arイオンを製品表面に叩きつけエッチングすることで、基板表面をさらに清浄にし、密着性を高める効果が出ます。
通常は400℃以上の熱がかかりますが、時間は5分~20分で処理が終わるのに対して、200℃以下でボンバード処理の効果が出る条件で行いました。
コーティング作業
加熱によるシャーリング刃の膨張の公差規格が±0.02mm以内という厳しい規格の製品だったので、自社で条件を出した低温TiNを成膜。200℃以下でのTiN成膜を行いました。
低温での成膜ですと、通常成膜よりも成膜レートが落ちてしまう為、お客様の指定膜厚が2.0µm以上だったので、複数回に分けて2.0µm以上の成膜を行いました。
シャーリングについて
シャーリング加工とは、加工機械を使って金属を切断する加工技術です。厚みのある金属を細かく切り分けたりする事ができます。シャーリング加工の機械は、台の上下に金属を切断する専用の刃(上刃、下刃)がついており、上下から挟み込んで金属を切断していくものです。
シャーリング刃の概要
サイズ:2000㎜×600㎜×20㎜
重さ:60㎏程度
材質:NS80