前回、電池という構造の記事を掲載していましたが、今回は電池という仕組みに使われている不溶性電極という物についての説明をしたいと思います。

不溶性電極は、電気的な安定性と耐蝕性の面から電解メッキなどの電極としての役割以外にもアルカリイオン・酸性水の精製、表面処理の電極、排水処理、電気防食などに使われるなど、用途としては様々な箇所に使われています。
業界としても、「電子・電気部品」、「表面処理」、「半導体」、「医療」、「美容」、「排水処理」、「環境・エネルギー」、「化学」などなど実は多岐に渡る分野で使用されています。

使用する用途によって様々な電極が存在するのですが、一般的に多く見られるのがチタン(Ti)を原料とした不溶性電極です。
ただ、チタンそのままの状態ですと、強アルカリ性などの溶液に浸漬した場合、溶解してしまう恐れがある為、表面処理を行います。

表面処理も用途により様々な種類がありますが、①酸化イリジウム(IrO₂)、②ルテニウム(RuO₂)、③プラチナ(Pt)、④プラチナイリジウム(Pt/Ir)などを表面に塗布する事が多いです。

①酸化イリジウム(IrO₂)電極

酸化イリジウム電極は、チタン基体の表面に酸化イリジウム(IrO₂)の酸化被膜を密着形成させ、高い電気化学的触媒性能を有し、かつ耐久性に優れた電極となります。
強酸性浴において酸素を発生させる場合に用いられ、特性としての酸素発生電位が低い。
硫酸系の電解においては、高電流密度で使用する事が可能で、作業の効率化を図ることが出来ます。用途としては、貴金属の電気めっき等の陽極として用いられることが多いです。

②ルテニウム(RuO₂)電極

ルテニウム電極は、チタン基体の表面にルテニウムの白金族金属またはその酸化被膜を密着形成させ、高い電気化学的触媒性能を有する、耐久性に優れた電極となります。
陽極酸化力が弱いので、有機物含有液においても光沢剤成分の分解が少なく、浴の長期安定化を図ることが出来ます。用途としては、ソーダなどの電解に用いられることが多いです。

③プラチナ(Pt)電極

プラチナ電極は、チタン基体の表面にプラチナ(Pt)の白金族金属、または酸化被膜を密着形成させ、高い電気化学的触媒性能を有し、耐久性に優れた電極です。金メッキ、ロジウムめっき、ニッケルめっき、イオン水精製用などに優れた性能を発揮します。

④プラチナイリジウム(Pt/Ir)電極

プラチナイリジウム電極は、チタン基体の表面に、プラチナイリジウム(Pt/Ir)の白金族金属、またはその酸化被膜を密着形成させ、高い電気化学的触媒性能を有し、耐久性に優れた電極です。用途としては、各種電解水の精製、または塩水の分解などにも用いられます。

各電極製造メーカー共に、それぞれ特色を持っていて、不溶性電極の寿命を延ばすために様々な検討を重ね、日々研鑽を重ねています。