お客様からのご要望

試作品4種類の文房具へのTiNコーティングの要望がありました。1つ目は30cm幅の材質SS400の定規でした。中心につなぎ目のあるタイプの定規でした。2つ目はφ50のS45C材のペーパーウェイトという文鎮の様な役割を果たすものでした。3つ目はステンレス製のマスククリップ、4つ目はSS400材のマスククリップに付くボタンでした。TiNコーティングの目的として2つありました。1つ目は傷がつきにくくなるよう母材自体の硬度を向上させる事でした。2つ目は装飾目的で母材自体を金色にしたいといった内容でした。

お客様は短納期を希望されていたので4種類のコーティングに対しての洗浄条件、取り付け条件(専用治具の選定など)、コーティング条件等を早急に対応しました。

各種文房具の概要

【定規】
サイズ:160mm×20mm(0cm~16cm部)+150mm×20mm(15cm~30cm部)
材質:SUS304
数量:6本
【ペーパーウェイト】
サイズ:φ50×30mm(球体を半分に切ったような形状)
材質:S45C
数量:2個
【マスククリップ】
サイズ:90mm×7mm×0.8t(端から15mmの部分でクリップのように曲げがある形状)
材質:SUS304
数量:6本
【マスククリップ用ボタン】
サイズ:φ16×2t(中央部にφ2の穴4箇所)
材質:SS400
数量:3個

受入検査

お客様から送られてきた製品は加工後の新品だったため、外観検査時には目立った外観の不備は無く、汚れ、シミ、キズなどがないか確認しました。

下処理、洗浄

脱脂、汚れ除去の目的で製品の全面を専用の有機溶剤にて拭き作業を行いました。再度仕上げを行った後に、洗浄機にて洗浄を行いました。洗浄上がりの製品に液シミなどが無いか入念に外観検査を行いコーティング工程へと流動しました。

コーティング(アークイオンプレーティング法)

材質別に製品を専用の取り付け治具にセットし台車に取り付けました。製品に治具との接触によるキズが入らないよう慎重に取り付けを行いました。試作品すべてのコーティングエリアが全面だったため製品を保持するための治工具作成に苦労しました。各材質で所定の温度で成膜許可圧力まで真空加熱による脱ガスを行いました。次に所定の時間アルゴンイオンを製品表面にたたきつけるイオンボンバード処理を行い、さらに表面のクリーニングを行いました。イオンボンバード処理を行う事によってコーティングの密着性向上につながります。

使用ガス流量、成膜時間、成膜時電流値、冷却時間等、それぞれの材質別のTiNコーティングの条件で成膜処理を行いました。コーティング終了後、膜厚測定を行い規定の膜厚以上に膜が着いているかを確認しました。また、外観検査を行いキズ、コート抜け、シミ、汚れ等が無いか確認を行い、梱包し発送となりました。

使用期間について

お客様より、定規とペーパーウェイトの仕上がりが良かったので量産も視野に入れて考えていますとの言葉をいただきました。他2点に関しても仕上がり状態には満足しておりますとのことでした。