お客様からのご要望

液晶、光学ガラス等精密平面研磨事業を行っているお客様より、超精密研磨用のSUSホルダーの耐摩耗性を向上させ交換サイクルを軽減させたいとの要望がありました。SUSホルダーの外側はギヤになっており、内側はレンズ等がセットされるよう母材の形状にくり抜かれた形状になっておりました。液晶パネルや各種光学用フィルターに使用するガラスの研磨に使用されます。

また、ガラスのみにとどまらず樹脂材や金属等様々な材質を高い精度で研磨処理することが求められます。更にお客様が使用するホルダーは大量生産向けということもあり耐摩耗性向上は生産性向上において重要な改善になると話しておりました。今回は0.2mm厚という薄さの母材となるため、通常のコーティング条件では400~500℃付近まで熱がかかり母材の変形や歪みが考えられることから、低温でのTiNコーティング処理を勧めました。実際に成膜してみないことには母材の歪みは分からない部分があるため、テスト成膜から行うこととなりました。

SUSホルダーの概要

サイズ:φ800×0.2mm
材質:SUS304
数量:5枚(テスト用含む)

受入検査

お客様から送られてきた製品は使用中の中古品でした。外観検査時には研磨材の残り、シミ、細かいキズ等が確認されました。

下処理、洗浄

脱脂、汚れ除去の目的で製品の全面を専用の有機溶剤にて拭き作業を行いました。専用の有機溶剤と研磨材にてお客様が使用されて残った研磨材のこびりつきやシミの除去を部分的に行いました。その後、前面の仕上げ洗浄を行いました。洗浄後の製品に液シミなどが無いか入念に外観検査を行いコーティング工程へと流動しました。

コーティング(アークイオンプレーティング法)

製品を専用の取り付け治具にセットし台車に取り付けました。製品に治具との接触によるキズが入らないよう慎重に取り付けを行いました。また、大きなリング状の薄い母材を熱による負荷がかからないように母材の固定箇所を慎重に選定しました。テストバッチにて熱による母材の歪みに対して最適な固定箇所を見つけることが出来ました。

次に所定の温度で成膜許可圧力まで真空加熱による脱ガスを行いました。真空加熱による脱ガスを行う事で成膜中のアウトガスが発生しにくくなり密なコーティングができるようになります。次に所定の時間アルゴンイオンを製品表面にたたきつけるイオンボンバード処理を行い、さらに表面のクリーニングを行いました。

低温用イオンボンバード処理を行う事によってコーティングの密着性向上につながります。使用ガス流量、成膜時間、成膜時電流値、冷却時間等、自社の低温TiNコーティングの条件で成膜処理を行いました。コーティング終了後、膜厚測定を行い規定の膜厚以上に膜が着いているかを確認しました。また、外観検査を行いキズ、コート抜け、シミ、汚れ等が無いか確認を行い、梱包し発送となりました。

使用期間について

現在は客先にて評価試験中。