お客様からのご要望
製品梱包に使用するテープを切る際に、テープの粘着剤が刃についてしまい梱包作業がスムーズに行えないといった内容の相談がありました。カッター刃表面に撥水コーティング加工をすることで離型性(非粘着性)が上がり粘着剤の付着を防げるのではないかと提案しました。
受入検査
表面に粘着剤、汚れ、シミ、キズなどがないか確認しました。使用状態が良かったので外観検査時には大きな問題はありませんでした。
下処理、洗浄
脱脂や汚れ落としのため、全面を専用の洗浄剤による拭き作業を行いました。次に全面を専用の金属磨きクロスにて磨き上げました。これは表面についている酸化被膜の除去やシミなどを落とすために行いました。キズの中に入り込んでいる汚れは超音波洗浄にて対応しました。更に全面を溶剤にて拭き上げて仕上げました。
コーティング
表面処理剤をカッター刃の全ての面に塗布し、フッ素樹脂膜を形成させました。基材反応基を有しないコーティング液を使用する事で厚塗りが可能になり、防湿性、電気絶縁性に優れた膜となります。
次に、所定の時間と温度による焼き付け処理を行いました。塗布によるコーティングは密着性が低い、塗膜が柔らかくなる、耐摩耗性に劣るなどのデメリットが挙げられますが、この焼き付け処理を行う事によって上記のデメリットを緩和し、耐久性の高い密な膜にすることができます。コーティング後、外観検査、梱包を経てお客様へ発送となりました。
使用期間について
撥水コーティングをして10カ月は膜の効果を維持した状態で使用する事が出来ました。使用期間が長くなるにつれて撥水膜の効果が徐々に無くなり離型性(非粘着性)が低下していったとのことでしたが、塗布による撥水コーティングでは長寿命との評価を頂き、定期的なコーティング依頼をいただいています。
テープカッター刃の概要
サイズ:およそ3㎜×20㎜×3㎜
材質:ステンレス
撥水膜について
撥水とは、生地や基板の表面に付着する水分をはじくことを言います。撥水コーティング加工を施すことにより、金属やガラス表面に高い發液性能を有する
薄膜を形成し基材への樹脂、油等の付着防止や防汚性向上の効果が得られます。
また、離型性(非粘着性)の向上に対しても効果を発揮します。フッ素という物質は電気陰性度が高いため、その化合物であるフッ素樹脂は表面張力が小さくなります。
一般的なものは、自動車のボディーやフロントガラス、洗面所やお風呂場の鏡などに使用する事が多いです。