お客様からのご要望

ホットカットナイフプラスチック成型機の一部に使用されるカッターが樹脂材料を切断後に樹脂のこびりつきが出てしまい、切断するたびにこびりついた樹脂の除去をしなければならない状態でした。樹脂の除去作業により生産性が下がりカッター自体の寿命も短くなってしまっているといった悩みでした。高温環境下での仕様及び切断対象物も高温といったこともあり、TiNコーティングよりも耐熱性の高いTiAlNコーティングを提案しました。

樹脂用カッター刃の概要

サイズ:およそ145㎜×12㎜×1.5㎜
材質:SUS304
状態:中古品

受入検査

中古品ということもあり刃表面に樹脂剤、汚れ、シミ、キズなどがないか確認しました。

下処理、洗浄

脱脂や汚れ落としのため、全面を専用の洗浄剤による拭き作業を行いました。次に全面を専用の金属磨きクロスにて磨き上げました。これは表面についている酸化被膜の除去やシミなどを落とすために行いました。キズの中に入り込んでいる汚れは超音波洗浄にて対応しました。更に全面を溶剤にて拭き上げて仕上げました。

コーティング

所定の温度による真空脱ガスを経て高真空領域まで真空引きを行いました。使用ガス流量、成膜時間、成膜時電流値、冷却時間等、TiAlNコーティング用の条件に合わせ込み成膜を進めました。コーティング終了後、膜厚測定、外観検査を経て梱包し発送となりました。

使用期間について

成膜未処理品使用時の清掃サイクルが、4時間に1回行っていたものが8時間に1回で済むようになり、清掃サイクルに関しての効果は2倍となりました。掃除自体も樹脂のこびりつきを容易に除去できるようになりました。また、カッター自体の交換サイクルに関しては、5日に1回交換していたものが、20日に1回で済むようになり交換サイクルに関しての効果は4倍となりました。

TiAlNコーティング(窒化チタンアルミ)について

TiAlはTi(チタン)とAl(アルミニウム)の合金です。TiAlNはTiNよりも耐酸化性、耐熱性、耐摩耗性を向上させた膜になっています。耐熱温度は800℃程度となっており切削工具などに適した膜です。

また、TiAlNコーティング処理を施した切削工具において、切断後の樹脂の焦げ付きや切りくずが付きにくくなるといった特徴もあり、メンテナンス時間の短縮につながります。耐摩耗性のある硬い膜になっているので、工具寿命を長くするといったメリットも生まれます。TiAlNの膜硬度については3000~3500Hv程となっております。被膜色は黒紫色となります。