テストの経緯

弊社はフィルム製造メーカーなどとのつながりがあり営業間で、フィルム自体にコーティングは可能でしょうか?といった内容の話になり厚みの薄いものに対しての実績が無かったため社内で話し合い、薄いSUS箔へのTiNコーティング条件を出すことになりました。

SUS箔の概要

サイズ:430㎜×265㎜×0.2t(200µm)
材質:SUS304
数量:1枚

お客様から送られてきた製品はもともと金メッキ済みだったため、金メッキを剥がした状態で送られてきました。到着次第、表面にメッキ残り、粘着剤、汚れ、シミ、キズなどがないか確認しました。
金メッキされる前の製品自体は新品だったので外観検査時には大きな問題はありませんでした。

下処理、洗浄

脱脂、汚れ除去の目的で製品の全面を専用の有機溶剤にて拭き作業を行いました。
再度仕上げ拭きを行いました。0.2mmと薄いものになるのでなるべくシワが出ないよう拭き作業に関しては入念に行いました。
洗浄上がりの製品に液シミなどが無いか入念に外観検査を行いコーティング工程へと流動しました。

コーティング(アークイオンプレーティング法)

SUS箔SUS箔の外周を専用の取り付け治具にセットされているステンレス製のクリップで固定し台車に取り付けました。製品に治具との接触によるキズが入らないよう慎重に取り付けを行いました。次に所定の温度で成膜許可圧力まで真空加熱による脱ガスを行いました。次に所定の時間アルゴンイオンを製品表面にたたきつけるイオンボンバード処理を行い、さらに表面のクリーニングを行いました。イオンボンバード処理を行う事によってコーティングの密着性向上につながります。イオンボンバードを行う際にSUS箔に熱がかからないように条件を整えました。

使用ガス流量、成膜時間、成膜時電流値、冷却時間等、自社のTiNコーティングの条件で成膜処理を行いました。コーティング終了後、シワやキズにならないようSUS箔を取り外したところ、膜応力によりSUS箔が丸まってしまいました。同条件で反対面に成膜する事で1面目と同じ応力がかかり丸まった状態を緩和できると考えました。1面目と同様に台車に取り付け反対面のTiNコーティング処理を行いました。

反対面の処理が終了しSUS箔を取り出したところ、多少のシワはできてしまったものの、狙い通りSUS箔の丸まりはかなり軽減されていました。外観検査を行いキズ、コート抜け、シミ、汚れ等が無いか確認を行いました。密着性に関しても自社の試験結果より問題ないと判断いたしました。

試験結果、感想

取り付け方法や成膜条件を追い込むことで0.2µmの薄さにもTiNコーティングができることが分かりました。この経験を活かしこれまでにトライ出来なかった分野への挑戦もしていきたいと思います。