お客様からのご要望

S45C材の電磁ブレーキの防錆性を向上させたいとの要望がありました。
屋外で保管とのことでしたので気候の影響を受けさびやすいS45C材に防錆性のあるTiNコーティングを提案しました。
電磁ブレーキには2種類の金属部品がありそれぞれ材質は同じだがユニクロメッキ、ニッケルメッキが施されていました。

電磁ブレーキの概要

サイズ:φ80×6t
材質:S45C
数量:2個

受入検査

お客様から送られてきた製品は洗浄済みだったため、外観検査時には目立った外観の不備は無く、粘着剤、汚れ、シミ、キズなどがないか確認しました。

下処理、洗浄

脱脂、汚れ除去の目的で製品の全面を専用の有機溶剤にて拭き作業を行いました。再度仕上げを行った後に、洗浄機にて洗浄を行いました。洗浄上がりの製品に液シミなどが無いか入念に外観検査を行いコーティング工程へと流動しました。

コーティング(アークイオンプレーティング法)

電磁ブレーキへのTiN膜コーティング製品を専用の取り付け治具にセットし台車に取り付けました。製品に治具との接触によるキズが入らないよう慎重に取り付けを行いました。次に所定の温度で成膜許可圧力まで真空加熱による脱ガスを行いました。

次に所定の時間アルゴンイオンを製品表面にたたきつけるイオンボンバード処理を行い、さらに表面のクリーニングを行いました。イオンボンバード処理を行う事によってコーティングの密着性向上につながります。使用ガス流量、成膜時間、成膜時電流値、冷却時間等、自社のTiNコーティングの条件で成膜処理を行いました。ニッケルメッキ品に関しては問題なくTiN膜をコーティング出来ました。外観検査、膜厚、などコーティング後の検査に問題はありませんでした。

ユニクロメッキ品に関しては、TiNコーティングがうまく基板に乗らず、煤けたような状態で出てきました。この結果からTiN膜はニッケルメッキとは相性が良くコーティングは問題なく乗る。ユニクロメッキとは相性が悪くTiNコーティングは密着性が取れないことが分かりました。今後のコーティング業務において非常に重要な結果が得られました。ユニクロメッキ品の除膜を専用の剥離剤にて行いました。メッキも剥がし再洗浄、再コーティング行いました。除膜後の洗浄は剥離剤の残りなどが無いよう洗浄工程を変更して行いました。コーティング後、外観検査等を経て出荷となりました。

使用期間について

お客様より、TiNコーティングされた電磁ブレーキをすぐに使用していただきました。試運転のかぎりではブレーキ性能に問題は無かったことから、すぐに生産現場にて使用されていますとの報告をいただきました。2週間ほど経過した時点で動作異常は確認されていないそうでしたので一安心しました。使用後に腐食(錆び)の進行具合を確認する予定となっています。