お客様からのご要望

セイコークロック株式会社様より、鋼球(金属の球体)の耐久性向上・装飾用途の為、窒化チタンコーティングを依頼されました。

鋼球の概要

サイズ:φ11
材質:SUS440C

受入検査

お客様から送られてきた製品は新品だったため、外観検査時には目立った外観の不備は無く、汚れ、シミ、キズなどがないことを確認し洗浄工程へ流動しました。

下処理、洗浄

脱脂、汚れ除去の目的で製品の全面を専用の有機溶剤にて拭き作業を行いました。再度仕上げ拭きを行った後に、超音波洗浄機にて洗浄を行いました。製品同士がぶつからないよう一定の間隔をあけて洗浄が出来るような専用の治具を使用しました。洗浄上がりの製品に液シミなどが無いか入念に外観検査を行いコーティング工程へと流動しました。

コーティング(ホローカソードディスチャージ法)

セイコークロック金の玉製品を専用の治具にセットし装置へ投入しました。専用治具はコーティング時に製品同士がぶつかりキズが入ってしまう為、コート時の揺動によりぶつからないよう工夫して作成しました。次に所定の温度で成膜許可圧力まで真空加熱による脱ガスを行い、使用ガス流量、成膜時間、成膜時電流値、冷却時間等、自社のTiNコーティングの条件で成膜処理を行いました。ホローカソードディスチャージ法は他の金属成膜の手法と比較して緻密な膜が成膜されるため、表面がきれいに仕上がります。

コーティング終了後、膜厚測定を行い規定の膜厚以上に膜が着いているかを確認しました。次に外観検査を行い、キズ、コート抜け、シミ、汚れ等が無いか確認を行ったところ、製品に治具跡(コート抜け)が残ってしまいました。製品同士の接触を避けようと作成した治具に問題があり専用治具の改良が必要となりました。再度、専用治具を作り直しコーティングしたところ治具跡は無くなりましたが、製品同士がコーティング中の揺動によりぶつかってしまい、外観規格上NGとなってしまいました。

製品同士が擦れて発生するキズを抑えようとすると治具痕が残る。治具痕を消そうとすると、キズが入るという様なジレンマゾーンに陥り、双方を緩和する為の治具作成はかなり苦労しました。新たな専用治具の構造上全くキズが入らないという事が難しかったので、細かくて薄いキズに関して最終的にラップ処理を行うことで良品レベルまで仕上げられないかという御提案をさせて頂きました。

弊社ではラップ装置を所有していない為、外注先にてラップ処理を実施したところ、当初は表面を磨き過ぎてしまうなどの失敗もありましたが、何度もトライを重ね何とか最良のラップ処理条件を探すことができました。