昨今、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)という呼び名の表面処理を耳にする機会が増えたが、実際にどういったコーティングになるかというと、最高硬度を誇るダイヤモンドと一般的に良く目にする炭の中間の様な膜となる。

ダイヤモンドはsp3結合、炭はsp2結合という異なる骨格構造を有するが、DLCは両方の構造を併せ持ち、さらに水素を0~50%程含ませることが可能なので、無限に物性を変化させる事が出来る。

その為、今現在われわれの身近にも知らない所でも実際に数多くこの技術が用いられている。ただ発注する側としては、選択肢の幅が広がることは良い事ではあるが選定するにもその分難しくなってしまうので、それぞれコーティングメーカーごとに特色を持たせたDLCコーティングを打ち出している。

まず特筆すべきはその膜硬度と低摩擦性である。ダイヤモンドをビッカース硬度で表した場合5000~10000HVというのが一般的だが、それに対しDLCのビッカース硬度は3000~6000HVと硬度自体はダイヤモンドに匹敵するほどの硬度を持たせる事が可能である。

更に、摩擦係数は0.1程度まで低くなるので、ドリルなどの切削工具の刃や、車のエンジン内部の摺動部品などにも多く利用されている。

飲料用などのPETボトルにも実はDLCの技術が利用されていて、用途としては内用液の酸化等を防ぐためPETボトル内壁部に用いられている。DLCを厚くコーティングすると炭素らしい黒いコーティングになるのだが、PETボトル内壁には全く色味がわからないほどのナノレベルでの薄いコーティングがなされている。

それでも、効果としては十分発揮され、昔と比べて今は数多くのPETボトル容器での製品が世の中に流通できるようになった。

その他、装飾用途にも利用されることもあり、通常の塗装とは違い透過性をもつ薄い膜となりながらも、強度的には上述の通りダイヤモンドに匹敵するような硬度を持ち合わせているので、普段の生活の中で衝撃を与えやすい腕時計などに良く用いられる。

主に身近な例を上げたが、DLCはさらに多くの用途に利用出来る。高硬度、高耐摩耗性、低摩擦係数、高絶縁体、高化学安定性、高ガスバリア性、高耐焼き付き性、高生体親和性、高赤外線透過性などの特性を有し、上記にも記載したが骨格構造の比率・水素含有量・膜の厚さ等を変化させることにより用途に適したコーティングへ変化させることも可能なので、様々な用途に利用可能である。

まだ未知数な部分があるので、未だ利用されたことのない分野でも利用可能かもしれない。

コーティングの手法としては、PVDでもCVDでも可能となるが、現在流通している物の多くはCVD手法でのコーティングが主で、メリットとしては複雑な形状の製品にも均一なコーティングが可能となるが、デメリットとしてコーティング時にはかなりの熱が掛かってしまい材質・形状によっては変形してしまう恐れがあるので、それぞれ製品・材質に適したコーティング手法の選定が必要になる。