クロムコーティング湿式メッキの中に、一般的に流用されている「クロム(Cr)メッキ」というものがあります。

見た目が綺麗な銀色で、大気中で変色せず外観が美しく、腐食されにくい性質を持っている為、非常に多くの大衆的な製品に用いられています。

クロムメッキの中でも、装飾クロムメッキと硬質クロムメッキという種類があり、装飾メッキに関しては、その名の通り目的としては装飾となるので、日々の生活の中で目にするような雑貨品から自動車用部品まで様々な製品に用いられています。

特色としては、中間層に銅、ニッケルなどの層が被膜された上に薄いクロムメッキを施されることが多いです。クロム自体は薄いので、耐摩耗性が小さく、剥がれ易いのが欠点です。

一方硬質クロムメッキに関しては、装飾用メッキに比べ非常に厚く(2μm~100μm程度)被膜するため、非常に硬く(750~1000HV)、摩擦係数が少なく、耐摩耗性・耐腐食に優れています。

その為、工業用の機械部品、ローラー、金型などに用いられ、摩耗による寿命を延ばすことが出来たり、プレスされた製品との離型性を上げることにより、生産効率が向上したりと、見えにくい部分ではありますが、生産現場での非常に大きな助けとなります。

乾式メッキの中にも、同じようなクロムを被膜させるコーティングがあり、乾式メッキの場合には成膜時に違う物質と組み合わせることにより、より高硬度・高耐熱性・高耐腐食性となるコーティングを目指し技術の開発が進んでいます。

代表的なコーティングで、窒化クロム(CrN)コーティングという色調がシルバーグレーである機能性金属膜があります。

このコーティングの特徴はまず硬度で、膜厚は湿式メッキの硬質クロムメッキに比べ、大体2~3μm程度と薄く思われますが、窒素と化合させることにより2~3μm程度の膜厚でも1500~1800HV程度の硬度を誇り、硬質クロムメッキよりも非常に高い硬度を持たせる事が可能です。

更に、ゴム成形時に発生するハロゲン系のガスをはじめ、酸・アルカリいずれに対しても、優れた耐食性を持ち、摩擦係数が少なくなるので、金型などの工業系部品に多く適用されていて、化学薬品を用いるような場所の製品にも重宝されています。

酸化温度も700~800℃付近となるので、摺動部品などの摩擦摩耗によるカジリ防止などにも効果的で、例えばエンジン内部のピストンリングにコーティングされたり、金属を加工するドリル、エンドミルなどにも多々施されています。

製造工程内でも、RoHS規制対象となる六価クロムを発生させないので、環境に対してもクリーンな金属膜となります。

その他、アルミなどの金属と合金化する事により、更に高硬度・AlCrNのような被膜も出来ています。CrNよりも、高硬度であり、高耐熱性が望めるなど、他の金属・膜種の組み合わせ次第では今後もまた新たな形のクロム被膜も期待されています。