乾式メッキにも色々と成膜手法がありますが、湿式メッキにも様々な種類のコーティング手法があります。今回は代表的な手法をいくつか紹介したいと思います。

電気メッキ

電気メッキとは、メッキしたい金属イオンを含む水溶液中で、被成膜品を陰極(マイナス極)、メッキさせたい金属を陽極(プラス極)とし、電気を通し電解させコーティングをする手法となります。電気を通すことにより、非常に密着性の良い被膜を形成させる事が可能で亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)等、主に装飾や、耐蝕、耐摩耗などを目的とした製品などに良く用いられます。電解液自体は、金属イオンが存在する金属塩溶液であればなんとかコーティング出来てしまうのですが、メッキ特有の光沢のある緻密な皮膜を形成する為には添加剤が重要な役割を担います。光沢を出すためにはその名の通り光沢剤という添加剤が必要となり、スポットを抑制する為には界面活性剤などを添加したりします。

電気を通す事となる為、下地となる母材の導電性によっても、密着性などがかなり左右されてしまう為、前処理である洗浄が重要となってきます。工程としては、まず溶剤による脱脂を行い乾燥をさせます。次にスケールなどがある製品に関しては酸洗浄を行ってから、さらにアルカリ洗浄を行います。その後、さらに電解洗浄、必要であれば酸浸漬などを行ってから、やっとメッキ処理を行えます。洗浄を怠ったりすると、剥離、膜弱などの不良につながる為、洗浄には細心の注意が必要となり、非常に手間がかかる手法となりますが、現代のメッキ処理技術の中では主だった手法となります。

無電解メッキ

無電解メッキは、その名の通り電気を使わず、化学反応によって被膜を形成させる手法となります。その中でも、大まかに分けると置換メッキと還元メッキという手法に分類する事が出来ます。置換メッキは、メッキをしたい金属よりも被膜させたい製品のイオン化傾向が大きい場合にのみ可能な方法となります。イオン化傾向の大きい製品側の金属がメッキ液中に溶解する際に電子を放出し金属イオンとなり、メッキ液中に存在する金属イオンが電子を受け取って置換し、製品表面を覆います。この際、製品自体が還元剤の役割も果たしている為、製品表面がメッキで完全に覆われると反応が終了します。その為厚膜の形成は難しくなります。還元メッキは、還元剤を使用してメッキさせたい金属を析出させる手法で、非触媒型と自己触媒型があります。

非触媒型の場合、メッキさせたい製品だけでなく、メッキ槽内、さらには治具に至るまでメッキされてしまう為、金属イオンの消費が早く、メッキ液の劣化が早い為、厚膜の形成は難しくなります。自己触媒型は、非触媒型と同じように化学薬品の還元能力を利用してメッキさせたい金属を析出させますが、その析出させた金属が触媒として作用する為、還元反応は製品自体に限定されることになります。したがって、還元剤が劣化してきた際に補給するなどしてメッキ液の組織を維持する事が出来れば、厚膜も可能です。自己触媒型の代表的な物として、無電解ニッケル-リン(Ni-P)メッキや、無電解銅(Cu)メッキなどがあり、金属だけでなくプラスチックやセラミックなどにもメッキをすることが可能です。

ニッケル-リン(Ni-P)メッキの硬度としては、500~550HVと言われますが、さらに熱処理を行う事により、900~1000HV程度まで硬化を調整させる事が可能になり、尚且つ形状・材質などにも影響を受けにくい為、幅広い分野で活用されています。

溶融メッキ

溶融メッキとは、溶融している金属の中にメッキしたい製品を浸漬させ、表面に被膜を形成させる手法になります。一般的に、「ドブ漬け」、「天ぷら」などといわれる手法がこれに当たります。主に、亜鉛(Zn)メッキが多いですが、アルミニウム(Al)、亜鉛アルミニウム合金(Zn-Al)、すず(Sn)、はんだなどの溶融メッキもあります。亜鉛(Zn)メッキは、主に製品の防錆を目的として利用されており、アングル、チャンネル、ボルト、ナットなどの鋼材に良く用いられています。皆さんが街中で見かける送電用の鉄塔などにも、亜鉛(Zn)メッキが処理されていたりします。

メリットとしては、他のメッキ可能な金属よりも耐蝕性が長く継続しますので、耐費用効果も得られます。デメリットとしてはメッキ時の亜鉛(Zn)浴槽が、440~470℃程度になりますので、耐熱温度が高い物にしかメッキ処理は不可となります。以上、代表的なメッキの手法・種類を紹介してきましたが、この他にも様々な種類のメッキ処理が存在します。製品の用途、使用環境に応じて、正しいメッキ処理の選定を行う事により、低コスト高寿命な製品に仕上げられるかもしれません。